土エイジングと称して、デニムを土で汚して経年変化を試していましたが、その変化のなさに耐えきれず「いっそのこと染めてやれ」と思い、泥水に浸してみたレポートと考察です。
土染めを考えた訳
きっかけは旅でデニムを穿き続けて感じた古着の匂い。これを日常的に再現するためのものです。
デニムをビンテージのように育てたい。デニムを愛する人間なら誰しも、一度はあれこれとその方法を考えたことがあると思います。当時の環境を再現そこでまず考えるのが、当時の環境を再現すること。・リジットのまま穿かれたいたと云われる当時の[…]
とはいえ、土とか汗とか、元々デニムの経年変化の理由として云われてきたもので、目新しい考え方ではありません。
土エイジングの発端はこれ「デニムの育て方 - 旅編」。汗をかいて、砂埃がある環境でデニムを履き続けていると、古着の匂いがした。これを無理に再現するために、デニムを土で汚してエイジングするというシンプル極まりないお話です。[…]
遠慮がちに土で汚していたのですが、どうせならがっつり染めた方がいいんじゃないかと思い、今回に至ります。
普通に穿いてはダメ
土染めで変化を狙うにあたり、もう一つ思ったことがあります。
日本のレプリカブームの歴史は30年以上に渡っていて、今と近いクオリティになってから25年が経とうとしています。
ドゥニームXXが爆発的に売れ始めたのが1995年頃で、続いてフルカウントのジンバブエコットン、マッコイズ、ウエアハウスと続き、90年代後半にはひとつの完成領域に入っていたと思います。
そこで思ったのが、90年代のレプリカジーンズが、未だヴィンテージのようになっていない。
ということは、かなり特殊な環境でデニムを穿かない限り、ヴィンテージっぽくならないということです。
90年代にリーバイスの66モデルにもヴィンテージの雰囲気を感じていたということは、70年辺りに生産されていたデニムにも十分ヴィンテージ感を得ていたということです。
レプリカジーンズが25年経ってそれを感じないのはおかしい。
土染め云々ではなく、普通に穿いていては何年経ってもヴィンテージのようにならない。
これが一つの見解です。
あれからデニムも進化しましたが、正直バージョンアップに他ならないと思います。
つまり刷新的な変化はないので、「雰囲気を出す方法を考えた方が、デニムの進化を待つより早い」と考えて本腰を入れようと思うようになりました。
土染めの狙い
別記事で既に書いたのですが、リプロダクトデニムで一番気になるのが「色落ちした時のインディゴの青々しさと、色落ちした部分の白さ」です。
ブランドによってはそうでもないですが、今の主力デニムブランドに共通して感じる部分で、色落ちに粘りがない。
裏を返せば色落ちし過ぎる生地だということと、色が白く抜けた部分への着色が少ないことが要因だと思います。
- インディゴの青さを抑えるために、赤っぽい土を足すことで、青が濃くなり色のトーンが変えられるのではないか
- 色落ちした生地が白い部分に色が付くことで、青さが目立たなくなるのではないか
- 土の成分によるインディゴや生地の変化に期待
赤土染め
前置きが長くなりました、赤土染め開始です。
まず赤土は、といっても赤っぽい土です。ホームセンターで購入。それを水に浸して、指でダマを無くします。
後はこれに水を加えてデニムを漬け込む。それだけです。
これを裏で漬け込んで乾燥。表でも漬け込んで乾燥させました。
土の量はバケツ1杯に対して、大きいマグカップ1杯分ほど入れました。
それを乾燥させたのがこちら。どうでしょう。ただの汚れたデニムの出来上がりです。
しかも並みの汚れではありません。
染まっているというより、土が付着している状態です。
赤土染めとはいったものの、染料ではないのでインクが染み込むようにはいきません。
ちなみにインディゴも染まっているというより、粒子が付着しているといった方が正しいようです。
裏はこんな感じで、スレーキには色が入っていますが、デニムの生地自体の色はほとんど変化がありません。
アップだとこんな感じ。叩けば砂ぼこりが舞う状態なので、穿くわけにもいきません。
ただ何らかの変化と土の定着を期待して、2週間ほど寝かしました。
水洗い1回目
洗濯機で回すと土が全部取れてしまいそうだったので、バケツに水を張って軽く土を落とすために洗いました。
土の塊は取れてるけど、土の付着は残っている状態です。
この状態でしばらく穿き込もうと思ったのですが、とんでもない穿き心地で断念しました。
土の塊はなくなっていたのですが、デニム生地に膜をはるように土が薄っすら付いていて、穿くとベトベト。
カーペットとかも汚してしまいそうだったので、洗濯機で水洗いすることにしました。
水洗い2回目
パッと見はあまり変わりませんでしたが、1回目に比べると穿き心地はある程度良くなります。
といってもベタつきはあり、まだまだ土の膜は取れていない感じです。ただなんとか我慢できるレベルだったので、穿きながら土が落ちていくのを待ちました。
2、3日穿いて、やっと抵抗なく穿くことができるレベルにはなりましたが、土汚れは結構気になるレベルだったので、もう一度水洗いしました。これが現状の最終結果です。
最終結果
↓土染め前の写真がこれです。
写真で見るとほぼ分からないレベル。。太陽光の下だと差が分かりずらいです。
ただ室内で肉眼で見ると今の方が結構汚れていますし、インディゴの青さもくすんで見えます。
インディゴ部分は色落ちした白い部分が汚れることで、白の反射がなくなった錯覚もしれません。まあ誤差レベルの変化ということです。
裏返してみるとスレーキの色は変わっているので、多少なりとも土の色が入り込んでいるということでしょう。
ラングラーモデルのこういったアタリが出て、色の濃淡差が大きい部分では汚れの定着が分かりやすいです。
感想と変化
この土染めの効果があったかどうか訊かれれば、短期間では効果がないと答えます。
恐らくしばらく穿き込んで、洗剤入れて洗ってしまえばほとんど元通りになると思います。
ただ長期での効果となると、期待を込めて効果は未知数。汗と土を定期的に注入してあげて、しばらく寝かしてを繰り返して、やっとなんらかの結果が見えてくるのではないでしょうか。