リーバイスXXを愚直に完全再現を試みたデニムとして、2020年に誕生したJELADO(ジェラード)の301XX。
2年近く穿き込んでみて、やはりこれは語るべき必要のあるデニムだなと思い筆を執りました。
リプロダクトの開発から20年以上を経て
レプリカジーンズの歴史を辿ると1980年代後半からダルチザン/ドゥニーム/ロデオアンクル(ラピーヌ)などがありますが、フルカウントのジンバブエコットン、ウエアハウス、マッコイズなど、今も人気のブランドが揃ったのは90年代後半になります。
その時期から本格的にXXの追及が始まったと思うのですが、完全再現を謳うウエアハウスを含め、正直にXXを再現しようとしたブランドはありませんでした(と思う)。
きっとそれをしてもインパクトがなく、色落ちが遅くメリハリが少ないデニムを作るのは商売的なリスクがあったと思います。
また作り手としてもなんらかの個性を出したいということはあったと思います。
それはそうとして、少なくともウエアハウスはブランドコンセプトや謳い文句として、完全再現を目指す必要があったと思いますが、残念ながら言葉とは裏腹にウエアハウスはそれをしませんでした(多分)。
もう20年以上前から買う側は同じことを言っているんです。
「結局、ビンテージのリーバイスのようにならない」
エイジング云々の問題はありますが、例えエイジングされたとしても、リーバイスと同じようなものにならないことは誰もが気付いているけど、それも含めてM的にこの状況を楽しんでいる状態だったと思います。
そこでやっと、本来やるべきことをやってくれた(はず)なのが301XXでした。
国際的な研究機関に生地の分析依頼をかけるために理想のDEADSTOCKの501XXをみつけ生地を切り刻むこと。
そして、その詳細な分析結果を咀嚼し再現できる紡績・染色・製織・裁断・縫製の「一流」を全国から集めることでした。結果、ベースとなった個体と同じ繊維長と各種要件をもった米綿を用意し撚り回数・番手をコンマ0以下のレベルで再現したタテ・ヨコ糸が完成。
そして、それらを99.9%色ブレがないファクトリーで染色しいまや世界的にみても稼働していることが奇跡ともいえる “TOYODA G3”で分析結果をもとにした打込み本数で製織。さらに縫製に関しても手を抜かず縫製糸の色・番手・運針も解体したDEADSTOCKをトレースし下糸の色合わせもおこないつつ各部の使い分けを完全再現。
ヘルトループのカンヌキを左右バラバラにすらして縫製したり一箇所だけベルトループのステッチを2色使いしたりと当時ならではの雑なテイストも生かす方向て仕上けています。
JELADO 301XXの色落ち
私なりに穿き込んだ301XX。
50年代の501XXの再現を試みた本デニム。私の軟弱な穿き込み方では当時の雰囲気は出せませんが、全体の雰囲気としては今までのリプロダクトの中では最も当時のXXに近い雰囲気だと思います。
ただバックの色落ちはフロントに比べると劣ります。
同じ生地なのになぜでしょう?座っている時間が長く、穿いている間、湿っぽくなっていること。
ヒップが小さいことによるフィットとの関連性がある気がします。
JELADOの再現性
最大限に再現をしたと思われる301XXですが、そもそも個体差がある当時のデニム1本を再現している訳ですから、完全再現できたとしても自分が思い描くXXになるかは分からない。
そういった理由があるのであれこれは言えないですが、やっぱりムラ感は足りないと思います。
生地全体というより、当時のXXは絶対的に糸の太さが揃っていないんですよね。
なのでここは意図的に太い糸を入れ込むなどの工夫が欲しかったなと思います(好き勝手言います)。
シルエット
ベースにしたXXが確か36インチ。それをトレースしているという点については、発売前から「オイオイ」とは思っていました。
かなり大きいサイズなので「それぞれのサイズ比違うでしょう」と。
その点はJELADOさんも気付いていたみたいなので(Youtube)、なんでこの点ぬかったのでしょう。
まあ結果的にはオリジナルのサイズ感じゃない方が良かったので、結果オーライだとは思いますが。。
染め
これは後追いの情報だったので「そりゃないでしょ」と思いましたが、「誰が穿いても色落ちが楽しめるように、色落ちしやすい染め方にした」とのこと。
これはやっちゃいかんでしょう。90年代の繰り返しじゃないですか。
確かに色落ちが早い分、楽しめたところはあるのですが、色の粘りはないなと思います
JELADO 301XXの総評
生地のイレギュラーな織りムラというか、糸ムラは意図的な再現が難しそうなので仕様がないと思いますが、染めの部分は「言葉に偽りあり」なところが納得いきませんが、ビジネス的なことを考えると納得するしかないですかね。
何はともあれ、リプロダクトのデニムブランドとして名を上げたブランドがやらなかったことをやってくれたという点、またデニムの出来の良さという点では、やっとXXの再現という数十年の課題解決を一気に短縮してくれたと思います。
その点ではやっぱりこれは、大きな仕事でした。JELADOさんありがとう。
続301EXX
私が感じていたような点はJELADOさんも感じていたようで、やっぱり40年代のXXのような色濃くて、凹凸感のあるデニムを再現したいとのことで、続編として「301EXX」の品番で40年代のリプロダクトデニムを作っています。
ただ今回はデッドストックの40年代XXデニムからの再現ではなく、ある程度は穿き込まれたデニムをベースにしたデニムの再現のようです。
シルエット
今回のベースとなるデニムのサイズが、一般的なサイズからのトレースになるようなのでよりオリジナルに近いものになるのは確実。
ただオリジナルのサイズバランスは割と太くないと思うので、ジャストサイズで穿いた時には、現代的なファッションとの相性は悪くなるかもしれません。
生地・染め
勝手な想像ですが、色落ちしたデニムを解析したとしてもデッドストックの状態は想像になります。
なので、恐らく想像で色や生地を合わせてくると思います。
サンプル画像を見る限り方向性は発言通りですが、やり過ぎていないか心配になります。
結局90年代レプリカの繰り返しは勘弁して欲しいところですが、写真だけでの判断は難しいですね。。
やり過ぎている感がある気はするのですが。。
デニム及び日本製プロダクトの未来に向けて
我々世代が胸を熱くしてきた数々の魅力的な製品ですが、主な買い手は40代以上だと思います。
それを踏まえると、そろそろビンテージの再現は一旦終わりにして、現代的なファッションに合った質の良い製品。というのが目指すところなのかなと思います。
未来に向けて。アメカジブランドの皆様には、ファッション性を意識した製品への落とし込みをしてもらえることを希望するこの10年。
ちょくちょくコンセプトのあるブランドは生まれていますが、このオタク感の世界を若い世代や世界に届ける。
そんなコンセプトにブランドがシフトしていくことを望んでしまいますね。
私と同じ40代オーバーの方も、タックインして、オーバーサイズの上物着て、未来について考えましょう。
このデニムをきっかけに、日本製製品の作り込みの素晴らしさとビジネス的な部分、そして我々が愛した製品の素晴らしさが引き継がれていくことに対して考えさせられました。
とりあえず、301EXX愉しみにしています。そして買います。
というところで、この記事は締めさせてもらいます